エビデンス
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獣医業界では、エビデンスという言葉が非常に誤解されています。エビデンスには階層性があります。論文にできなかった学会発表止まり程度のデータ、商業誌レベル、日本人しか読めない日本語論文、デザイン化されていない試験データなんて、低レベルのものです。真面目に考えましょう。
去勢・避妊手術が寿命に与える影響
・犬
・例数 約70000 頭
・retrospective study
去勢(グラフ左)、避妊(グラフ右)手術により、それぞれ寿命は、13.8%、26.3%延長した(P < 10-6)。
性別 | 寿命 | |
---|---|---|
雄 | 14.09歳 | |
去勢 | 14.15歳 | P < 0.001 |
雌 | 13.77歳 | |
避妊 | 14.35歳 | P < 0.001 |
・犬
・例数 約240万頭
・retrospective study
去勢,避妊手術ともに、有意に寿命を延長させた。
体重が寿命に与える影響
Size | 体重 | 年齢 |
---|---|---|
Small | < 9.1 kg | 14.95歳 |
Medium | < 22.7 kg | 13.86歳 |
Large | < 40.9 kg | 13.38歳 |
Giant | > 40.9 kg | 11.11歳 |
・犬
・例数 約240万頭
・retrospective study
体重が重くなると寿命が有意に短くなる(P < 0.001).
犬種と寿命(中央値)
Giant | 頭数 | 寿命(歳) |
---|---|---|
ピレネー | 2714 | 11.66 |
S・バーナード | 3171 | 10.07 |
グレートデン | 10261 | 9.63 |
Large | 頭数 | 寿命(歳) |
---|---|---|
ラブラドール | 135179 | 13.27 |
ゴールデン | 46896 | 12.93 |
シェパード | 49789 | 12.46 |
ブルドッグ(米) | 12025 | 11.71 |
ロットワィラー | 19116 | 10.98 |
Medium | 頭数 | 寿命(歳) |
---|---|---|
A・コッカー | 33649 | 14.28 |
ビーグル | 39181 | 14.06 |
ボクサー | 53257 | 11.22 |
ブルドッグ(英) | 26144 | 11.16 |
Small | 頭数 | 寿命(歳) |
---|---|---|
ダックス | 62372 | 15.20 |
シーズー | 109559 | 15.08 |
マルチーズ | 46772 | 14.70 |
チワワ | 144169 | 15.01 |
ヨーキー | 110706 | 14.62 |
・犬
・例数 約240万頭
・retrospective study
体重が重くなると寿命が有意に短くなる
去勢・避妊手術が死亡原因に与える影響
・犬
・例数 約70000 頭
・retrospective study
去勢避妊手術で、乳がん(Mammary Cancer)の発生は統計学的に有意に低下した。その他の7種類の癌は、手術を受けていない場合と比較して、高いか同程度であった。
雑種と純系の寿命の違い
Size | 体重 | 比 |
---|---|---|
Small | < 9.1 kg | 1.160 |
Medium | < 22.7 kg | 1.356 |
Large | < 40.9 kg | 1.487 |
Giant | > 40.9 kg | 2.577 |
・犬
・例数 約240万頭
・例数 約240万頭
・retrospective study
雑種犬の方が、純系の犬よりも、全ての体格の犬で有意に寿命が長かった(P < 0.001)。
フィラリア耐性株の出現
Dirofilaria Immitis JYD-34 Isolate: Whole Genome Analysis
・米国のミシガン州(ミシシッピ川流域)
・MP3、JYD-34という薬剤耐性フィラリアが確認されている
全てのフィラリア予防薬に耐性をもつ。2019年現在、この耐性株の為、北米では新しいフィラリア予防薬および合剤の承認はできないと思われる。
フードに関するエビデンス
生食、自家製食を否定はしませんが、ドックフード、キャットフードは究極のバランス食です。添加物や穀物食に関するデマが多いのでエビデンスを紹介します。
① BHAに関するエビデンス
(1) Safety and efficacy of butylated hydroxyanisole (BHA) as a feed additive for all animal species
・2018年の論文
・すべての動物種にBHAは安全かつ効果的な物質
・猫は許容量が不明であった
・BHAは摂取後に直ちに、便や尿に排泄される
(2) Endocrine disrupting effects of butylated hydroxyanisole
・2013年の論文
・人の食品、化粧品、医薬品に使用されている
・人には若干のエストロゲン効果
・そのホルモン効果の安全性への懸念は留保
② グレインフリー食に関するエビデンス
(1) Echocardiographic phenotype of canine dilated cardiomyopathy differs based on diet type
・2019年の論文
・グレインフリー食で犬の拡張型心筋症が発生
・血液中のタウリン濃度は変化無し
・タウリン供給により症状が回復
・2020年の論文
・ラブラドール・レトリバーのデータ
・グレインフリー食でも血中タウリン濃度は変化なし
・グレインフリー食による拡張型心筋症と、血中タウリン濃度は関係がない
・2020年の論文
・図のTDは一般的なフード、NTDはグレインフリー食
・ラブラドール・レトリバーのデータ
・グレインフリー食で、血中タウリン濃度低下による拡張型心筋症発症のリスクが上がる
③ 炭水化物に関するエビデンス
(1) Role of carbohydrates in the health of dogs
・2019年の論文
・炭水化物摂食と疾患(がん、肥満、糖尿病など)の関連性はない
(2) Natural pet food: a review of natural diets and their impact on canine and feline physiology
・2014年の論文
・犬猫のフードを考えるときの総合的な論文
(3) Geometric analysis of macronutrient selection in breeds of the domestic dog, Canis lupus familiaris
・2013年の論文
・犬の炭水化物の至適な割合は7%
(4) Geometric analysis of macronutrient selection in the adult domestic cat, Felis catus
・2011年の論文
・猫の炭水化物の至適な割合は12%
生食・自家製食に関するエビデンス
① 2020年現在の専門学会・機関の意見
・英国小動物獣医師会(BSAVA):獣医師の助言、生食由来の菌による家庭内感染症に留意して行う
・世界小動物獣医協会:行うべきではない。
・米国獣医師会:行うべきではない。
・米国動物病院協会:支持も拒否もしない。
・カナダ獣医師会:推奨しない。
・米国疾病予防管理センター(CDC):推奨しない。
② 多くの専門家期間は、生食・自家製食を推奨していない理由
・栄養状態が悪くなる
・家庭内感染症の蔓延
・動物園のデータでは、イヌ科の動物は、生食よりもドックフードの方が長寿
・歯石は、生食とドックフードで差がない
・猫で、生食とドックフードで寿命に差がない
批判的な総説
(1) 生餌を与える犬や猫についてクライアントにアドバイスする
・2019年の論文
・原著をPDFで閲覧可能
・上記②の内容を含む
・2011年の論文
・感染症、栄養状態悪化のリスク評価あり